奥野卓司「ジャパンクールと江戸文化」
昔むかし歌舞伎についての本を讀んだことがあつた。そのとき判明したのは、歌舞伎がジャンプのマンガに似てゐること。ケバい衣裳、とんがつたキャラクタ、どぎついストーリー、あくどい演出、なんと似てゐることか。
日本文化はおたくの文化なのではあるまいか、と思ひました。さういへば、落語の「四段目」(上方だと「藏丁稚」か)には、まさに歌舞伎おたくとしかいひやうがない少年が出てくる。
さう考へると、たとへば茶道でそこらへんにころがつてゐる茶碗をありがたがつたりすることなんぞは路上觀察學と大同小異のキッチュ趣味に思はれてくるし、武道や俳諧などせまい領域にひたすら沈潛してゆく志向は、おたく的ではなからうか。ちとこじつけですかな。
ともあれそんな本かと思つてコレを讀んだが、かなりちがふ。江戸時代の文化のありかたに學ばう、てな感じか。テクノロジーに關する記述は附會の氣味があるし、江戸時代が完全な鎖國ではなかつたのは自明にせよ、だからといつてグローバルに開けてゐたといふのも誇張があるやうに思ふ。
おもしろかつたのは、後白河天皇や足利義政がおたくであつたとしてるところ。最高權力者がおたくだとひどいことになるといふ教訓でありませうか。さて、麻生さんが總理大臣になつてしまつていいのかしらん?
- 作者: 奥野卓司
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/06/28
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