「比類なきジーヴス」(P・G・ウッドハウス)

 私には理解しがたいことがふたつあり、ひとつはウッドハウスのような小説があまり書かれないことであるが、これは私が無教養のために知らないだけかもしれない。そしてもうひとつはウッドハウスの作品がほとんど翻訳されないことであります。
 たとえば、「スミスにおまかせ」を読み、かつそれがシリーズものであると知れば、誰だってシリーズの他の作品を読みたくなるはずである。まあ、よほど知性のおとった輩以外はそうなるはずです。であるのに訳出されない。これは不可解であり、不愉快であり、不条理ですらあると言えます。
 まあ、内容なんてさして無い小説ではある。筋だってあってないようなものです。でも、読んで楽しくて幸福になれるのだから、それ以上なにを望むというのか。もちろん続刊である。「よしきた、ジーヴス」は6月刊とのことで待ち遠しいですね。
 そういえばアシモフが「黒後家蜘蛛の会」のヘンリーを造形するにあたってジーヴスを参考にしたと読んだ気がする。でも、さすがのヘンリーもこのジーヴスとくらべれば小物ですな。もっとも、マリオの服装にへそをまげたヘンリーが謎をといてくれない、なんて展開はまずいか。