「対称性人類学 カイエ・ソバージュV」(中沢新一)

 『対称性の論理によって動く高次元の流動的知性』などというコトバに実質的な意味はあるのだろうか。
 ソーカルらのやったことについては、ちょっとしたたとえ、比喩のつもりなんだからムキになっておたく的なつっこみするなよ、と思う。けれども、ここに出てくるクラインの壺だの、無限集合なんてのを読むにつれてソーカルたちにも一理あるように思えるのであります。とりわけ普遍経済学の数学的基礎のあたりはひどい。
 まあ、このシリーズを読んでいてこんなふうに思ったのははじめてではないわけですが、では何故ここまで読んだかといえば、1巻に紹介されていた昔話がとても面白かったからなのです。2巻以降もおなじくらい昔話が載っていれば、その間にどんなたわごとが展開されていようが気にならなかったんだけどねえ。